積極的なM&Aを活用した事業再生で規模を拡大し、ストック型ビジネスにも注力――株式会社ウイルプラスホールディングス

次代を担う成長企業の経営者は、ピンチとチャンスが混在する大変化時代のどこにビジネスチャンスを見出し、どのように立ち向かってきたのか。本特集ではZUU online総編集長・冨田和成が、成長企業経営者と対談を行い、同じ経営者としての視点から企業の経営スタンス、魅力や成長要因に迫る特別対談をお届けする。

今回のゲストは、輸入車ディーラーの持株会社である株式会社ウイルプラスホールディングス代表取締役社長の成瀬隆章氏。計10ブランドの輸入車販売網を通じて事業を展開し、2016年にJASDAQ、18年には東証1部に上場を果たした。2022年4月に予定される東証の市場区分の見直しに伴っては、プライム市場への上場を目指している。成瀬氏に、同社の成長の軌跡やコアコンピタンス、未来構想についてお話を伺った(取材・執筆・構成=大正谷成晴)

(画像=株式会社ウイルプラスホールディングス)成瀬 隆章(なるせ・たかあき) 株式会社ウイルプラスホールディングス代表取締役社長1970年福岡県生まれ。大学卒業後、トヨタ系ディーラーに就職。04年、福岡クライスラーの株式を取得し代表取締役に就任。07年、持ち株会社ウイルプラスホールディングスを設立。08年、チェッカーモータースを子会社化し社長就任(現会長)を機に業容を急拡大。その後もウイルプラスモトーレン、帝欧オート、ウイルプラスアインスを事業譲受および設立し、社長を兼任(現職)。得意とするM&A+事業再生を過去9度行いながら順調に取扱いブランドと販売エリアを増やし、グループ売上高は設立時30億円から直近の21年6月期には407億円と約10年で10倍以上に。16年に東証ジャスダック市場に上場。17年に東証二部、18年には東証一部と順調にステップアップを果たす。冨田 和成(とみた・かずまさ)株式会社ZUU代表取締役神奈川県出身。一橋大学経済学部卒業。大学在学中にIT分野で起業。2006年 野村證券株式会社に入社。国内外の上場企業オーナーや上場予備軍から中小企業オーナーとともに、上場後のエクイティストーリー戦略から上場準備・事業承継案件を多数手掛ける。2013年4月 株式会社ZUUを設立、代表取締役に就任。複数のテクノロジー企業アワードにおいて上位入賞を果たし、会社設立から5年後の2018年6月に東京証券取引所マザーズへ上場。現在は、プレファイナンスの相談や、上場経営者のエクイティストーリーの構築、個人・法人のファイナンス戦略の助言も多数行う。

過去9度のM&Aで取り扱いブランドを拡大し続けることに成功

冨田:御社はAlfa Romeo・FIAT・ABARTH・JEEP・JAGUAR・LANDROVERブランドを取り扱うチェッカーモータース株式会社、BMW・MINIブランドを取り扱うウイルプラスモトーレン株式会社、VOLVOブランドを取り扱う帝欧オート株式会社、PORSCHEブランドを取り扱うウイルプラスアインス株式会社を事業会社として、輸入車ディーラービジネスを幅広く展開しています。最初に、今日までの事業の変遷をお聞かせください。

成瀬:私自身は大学を卒業後、トヨタ系ディーラーに就職しましたが、父親が不動産業や中古車販売業を営んでいたこともあり、いつか事業を興したいと考えていました。そうしたなか、2004年に福岡クライスラーの株式を取得して代表取締役に就任し、07年に持株会社のウイルプラスホールディングスを設立しました。翌年にチェッカーモータースを株式取得により子会社化したことをきっかけに、これまでに計9度のM&Aを実施して事業を拡大しています。

輸入車ディーラーを選んだのは、国産はメーカーからの縛りが強いのに対して自由に事業を展開しやすく、業界ではヤナセさんがすでに筆頭に躍り出ていましたが、その他は地方の雄がほとんどで、我々が日本一にロールアップできるかもしれないと考えたからです。また、私は小売業で何かを成し遂げたいと思っていて、輸入車はお客さまを笑顔にできることも大きな動機でした。

冨田:IR情報を拝見すると、御社は創業以来順調に業績を伸ばしています。輸入車ビジネスはコンペティターが多く、競争の激しい領域でしょうが、どのように優位性を確立させてきたのでしょうか。

成瀬:既存の輸入車ディーラービジネスは新車販売を生業としますが、当社は新車と中古車を扱い、ストック型ビジネスの保険なども販売し、差別化を図っています。

ディーラービジネスは参入障壁が高く、今でも地方だと「このメーカーのモデルを買うならここ」というように守られた業界であり、あまり変化がなく脆弱な財務体質でも生き残ることができています。こうした業界構造に対して、我々は自分たちのなかでビジネスモデルを進化させてきました。また、先ほど申し上げたように当社は2008年から計9度のM&Aを実施しており、業界内を再編させながら事業を拡大させてきたのも特徴です。

冨田:なぜM&Aを継続することができるのでしょうか。財務体質が優良、バランスシートが厚い、もしくは御社の仕組みで他社を子会社化すると収益性が上がるなど、何か理由があると思います。

成瀬:それは事業再生力です。M&Aを実施した会社においても、8社が初年度から、残り1社も2年目から事業は黒字化しました、

積極的なM&Aを活用した事業再生で規模を拡大し、ストック型ビジネスにも注力――株式会社ウイルプラスホールディングス

冨田:業界に競合が多いということは、裏を返すと財務体力がないなど厳しい会社の存在を意味します。そうなった会社を子会社化して大きくなるという戦い方を御社は貫いているわけですね。

成瀬:おっしゃるとおりです。2008年から本格化させ、多い年には3社実施しました。本格的に再生して収益力が確立されるには2~3年かかりますが、腰を据えて取り組むようにしています。M&Aのペースは、縁ができるまでタイミングを待ち、何度もチャレンジを繰り返すばかりです。同じ会社に4回もアタックしたことがあり、数年がかりの交渉もありました。非常にしつこいというか(笑)、それも私の強みでしょう。今も案件は頭の中なかにあり、シナジーが生まれるタイミングで動き出すかを常に考えています。

例えば過去を振り返ると、リーマンショックのころには複数のM&Aを実施しています。適正価格で行うには時期を考慮する必要があり、高値でつかむことは極力避けないといけません。基本はしっかりと留意したうえで、これからも良いタイミングで進めていきたいです。

車との関係性が変わろうとする中、時代に合わせたビジネスをこれからも展開

冨田:2~3年で事業が再生するサイクルを複数実現すると再現性が確立されます。今は事業承継時代であり、御社のM&Aは有利に働くはずです。

成瀬:我々のM&Aは、子会社に大量に人を送り込むのではなく、1~2名のスタッフを配置し、教育して社内を変えていくことを大事にしています。よって、人を育てる力も非常に重要です。

冨田:近年、輸入車の新規登録台数は年30万台前半で推移していますが、今後は少子高齢化の影響を受けるかもしれません。

成瀬:バブル期の普通乗用車の販売台数は年538万台で、昨年は288万台でした。ところが、市中に走っている自動車の数は1996年の4500万台から、今は6100万台にまで増えています。近年はコネクテッドの観点でSIMカードを搭載した車も登場しているので、車検や整備・点検のマーケットは広がるでしょう。当社としてもこれらの領域や保険を含めた保険商品など、ストック部分に力を入れています。

冨田:自動車を含めたモビリティはコネクテッドやEV化、自動運転など、業界を取り巻く環境が様変わりしそうです。今後、車の中での時間の使い方は変わり、単なる移動から生活の空間になっていくと思います。使われ方は広がりますが需要はなくならないからこそ、自動車業界には環境に応じて適用する体制が求められるでしょうが、これまでも柔軟に対応してきた御社なら、課題をクリアするに違いありません。

成瀬:そうありたいと願っています。経営判断においてはどの頂を目指すか軸を明らかにし、原理原則を大事に進めたいですね。私自身は日々の経営の中で、「誠実」「勤勉」「知識や意欲を含めた賢さ」「やり抜くこと」の4つを大切にしていて、学びながら成長し続けたいと考えています。

冨田:それらを実践するに伴い、ご自身の強みも見えてくると思います。

成瀬:自己分析をしましたが、私は0を1にするクリエイティビティより、1を10や20にするほうが得意だと分かりました。それを生かした戦い方が大事です。ただし、登山に例えると、今はまだ4合目であり、周りに助けられて成長してきました。今後もそういった思いを忘れず事業に向き合いたいと思います。

冨田:PMIを含めてM&Aを成功させるにはやり抜く力がどうしても必要で、成瀬社長にはそういった力があると、今日の対談でしっかり理解することができました。それは、売上高や店舗数となって表れています。

双方が幸せになるM&Aを実施していることも特徴です。かつ、事業の仕組みを変えて収益を改善しないと、上場企業ですのでステークホルダーも満足しませんが、腰を据えて取り組むからこそ相手を再生できると感じました。それでは最後に、これからの未来構想をお聞かせください。

成瀬:既存事業の成長は、できることとして考えています。一方、これから社会が変わりサステナブルでつながっていく際、自動運転を可能にするには5Gや6Gの通信環境が必要になるなど、周辺が輪になり形になっていくはずです。シェアリングや脱炭素化など、自動車業界は変化を求められていますが、「つなげる力」を我々が持ちながら、対応したいと思います。いろいろな部分が重なり合って未来が拓けていきますので、それを認識しながら学び成長し続け、私たちが大きなことを成し遂げることを常々考えています。

冨田:車との関係が変わり、食事やゲーム、あるいは運動に近いことが車内でできるような社会になるかもしれません。そうなったとしても御社はサービスを開発し、提供する未来の姿を今日の対談で確信しました。ありがとうございました。

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